素直な目で          2002/2/17

僕は普段からこのHPに書いてるように、おおむねヨーロッパのピアノを良く思ってますよね。
もちろんそれはそうなんですが、その反面で、国産のピアノを、まあ基本的には(音が)良くない、と、まあはっきり申し上げてそう思ってる訳なんですね(^ ^;)。
もちろんそれはそう思ってるのでそう書くし、また普段でもどうしてもヨーロッパのピアノが音が良くて、国産のが悪い、というスタンスから出発してしまってるのですよね。
ただ自分で時々思うのですが、始めから、あまりにも国産のピアノを否定しすぎてないか、と、考えることがあるのです。
もう、基本的に、あるいは根本的に国産のピアノが音がよくない、みたいに思いこんでるように感じるときがあります。
自分のことなんですけどね(^ ^;)。
ちょっとそれでは、公平なピアノを見る目が出来ないんじゃないか、と最近思うのです。
もちろん傾向としてそういうことがあったとしても、いざピアノに向かったときには、もっと素直な目で見ないと、自分のピアノを見る目が狂ってしまうように、最近思います。
あまりにも先入観だけでピアノを判断すると、良くない、ということです。
もちろん予測したり、いろんな情報からそのものの本質を推測することは大事なことだとは思ってますけどね。
でも、僕の仕事は、あるいは僕に与えられた役割は、ピアノを峻別することでなくて、一台でも多くのピアノをいい状態に導くことなのですから。

で、今日見たピアノは、ですねぇ(^ ^)、ヤマハのアップライトU3M、昭和55年のピアノだったのですが、これがもうとってもすてきな音が出てるのですよ(^ ^)。
このピアノを使ってたお嬢さんはもう結婚し、2歳になる男の子がいます。
ピアノ自体もだから、もう長い間ほとんど使われない状態でありました。
でも調律だけは毎年定期的にずっとしてもらってました(^ ^)。
だから音もよく落ち着いてるし、音色もよく整った状態で、そのうえ、いい音なのです。
中音はふくよかなのびのある音だし、高音はまた明るいいい音です。
低音はちょっと残念ながら、巻き線の状態が悪いのか、のびが少し足りませんでしたが、それでも全体にはよくそろっております。
毎年調律をしてたらこんないいピアノになるのか、それは全然わかりません(^ ^;)。
ただ、関連性があるにせよないにせよ、こうしてたピアノがこんな状態だったという、ひとつの例としては記憶にとどめておくべきだろうと思ってます。

ここのお嬢さん、結婚して近くに住んでいるのですが、時々子供を連れて帰ってくると、その男の子が、おもちゃ替わりによくピアノを弾いてるそうなんです(^ ^)。
これは僕がよく思うことですが、ピアノの音がいいとピアノをよく使ってもらえ、音がよくないと、ピアノを使ってもらえないのですよね。
考えたら当たり前のことなのかもしれませんが、でもだから僕が調律をしていて一番うれしく感じるのは、ここのお家のように、今は弾き手がいなくても、しっかり調律さえしておけばこのように何も知らない小さな子供さんが、ちゃんとピアノを触ってくれるようになることなんです。
こんな時に実は、僕はうれしい!と感じるのです。
まあ出来ることなら、この男の子がピアノに興味を持ち続け、ピアノの世界に来てくれれば、と思います。
そんなふうになれば、僕がこのピアノをしっかり調律しておいた意味もあるのだと思います。


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