調律の日コンサート「バッハとラウテンクラヴィーア」 2005/5/7
日本ピアノ調律師協会中部支部では、ここ数年、毎年4月4日のピアノ調律の日(こんなのがあるんですよ)にちなんで、愛知岐阜三重の順番でコンサートを開催しています。
今年は愛知県の番で、4月6日名古屋千種文化小劇場で「バッハとラウテンクラヴィーア 〜ピアノのルーツを求めて〜」と題してコンサートを行いました。
トップページにも書きましたが、バッハの好きな僕はこの「バッハとラウテンクラヴィーア」という題にもひかれてコンサートに行ってきました。
会場である名古屋千種文化小劇場は、とても落ち着いた雰囲気の小ホールです。黒い内壁のホール内に入ると、中央にはウォールナット色をした八角形の低いステージがあり、そこを250席ほどの客席が取り囲んでいます。そしてそのステージの中央には一見ごく普通のチェンバロのようなたたずまいの、白木で作られた「ラウテンクラヴィーア」が置かれていました。
私たち調律師協会員は、コンサートの前にこの楽器の制作者であり今日の演奏とお話をしていただく山田貢先生より、楽器のレクチャーもしていただきました。バッハの時代のいろんな楽器の話や、その中でのラウテンクラヴィーアの位置づけなど、とても興味のあるお話でした。そしてまた、いかにして当時の楽器が変遷して、現代のピアノになっていったかということが、山田先生のお話でとてもリアルに感じられ、とても有意義なレクチャーでした。
そして、いよいよコンサートの始まりです。響板裏側にリュートのボディを4つ、筋交い棒のように取り付け(もっともこれは外からは見えませんが)、弦には羊の腸(ガット)を張ったこのラウテンクラヴィーアは、やはりまるでギターの前身リュートのような音が出ます。まあ、ガット弦を鳥の羽根(山田先生が毎朝の散歩の時に拾ってくるカラスの羽根とのこと
^^)で作ったタンジェントで引っかけて音を出すわけですから、当たり前といえばそうなんですが、そのリュートをかき鳴らすような落ち着いた音でバッハ時代の曲を聴いた時、当時の作られた音楽の意図したものがどういうものであったのか、ということがとてもよく感じられた気がしました。ちなみに「ラウテン」というのは「リュート」からきているそうで、「リュート風クラヴィーア」とでもなるのでしょうね。
現在はこういったバッハの曲もほとんどピアノで演奏されるわけですが、当時はやはりこのような楽器から、やがて鋼線によるチェンバロへ、そしていよいよピアノへという、楽器にとっても非常にダイナミックな変化の時代にあり、そんな中で曲も作られ、演奏されていたわけですね。もちろん現代のピアノで演奏するこういったバロックや古典の作品も、それはそれで素晴らしい音楽の世界を表現できるわけですが、こういった当時のスタイルの楽器でそれらの曲を演奏し、また聴くことは、作品の本来の意図をつかむうえで大変重要なことだと、今回の演奏を聴き強く思いました。
また、それぞれの楽器の歴史を知ることは、これから先その楽器がどういった方向へ向かうのかも示唆してくれるようで、とても大切なことだとあらためて感じました。
ラウテンクラヴィーア (山田 貢氏制作)
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