私のピアノ調律日記
「ゴムの音、木の音」 Irmler Piano (イルムラーピアノ) 2001.8.1(水)
今まで、国産のグランドピアノを使っていた、Mさんが選んだ新しいピアノは、ブリュートナー社(ドイツ)が出している、イルムラーピアノ。180cmの家庭サイズのピアノで、ちょうど部屋にもマッチした大きさです。。
今日は、ピアノが納品されてから、初めての調律です。
Mさんは、そりゃもう、とってもピアノを気に入ってくださり、とても喜んでいます。
曰く、「ピアノが変わったからとか、ひいき目とかでなく、もう、ほんとにいい音が出る。ピアノを習いに来る生徒たちも、みんないろんないい反応をしてくれるし、練習もしてくるようになったし、ほんとに良かった。」
音の表現としてはいろんな言い方があると思いますが、でも、とても落ち着いた、やわらかい音です。
タッチもその音に合わすかのような、ちょっと重い目のしっとりとしたタッチです。
最初、この重い目のタッチを、Mさんに受け入れてもらえるだろうかと、少し心配したのですが、いざ音を出してみたら、もう全然問題なく、かえって、このタッチでなければ、という感じさえあります。
1ヶ月前に納品されたとき、ピアノの脚の下に敷くインシュレーターを、Mさんが以前から持ってた耐震用の大型ゴムインシュレーターにしたのです。
ところが、それだとピアノ自体が少し床から離れるため、ペダルも床から高くなり、踏みにくくなったのです。
そこで、当初予定の木製の小型インシュレーターに今日、取り替えてみました。
すると今度は、ペダルは踏みやすくなったのですが、なんとピアノの音が今までと違って、少し、なんというか、暴れるような(?)感じになったのですよね。
「床がゴム」の音から、「床が木」の音に変わったのですね。
そこでいろいろ考えて、ちょうど、インシュレーターの高さ調節のために、厚さ2ミリくらいのゴム板を3枚準備してたので、試しにそれをピアノのキャスターの下に敷いてみました。
・・・ええ、良くなりましたね(^ ^)。
最初のしっとりとした音がよみがえりました。 やったー!(^ ^)
う〜ん、ほんとはどちらがいいのか、わかりませんし、また、どちらとも断定できないのかもしれません、それは好みですから。
ただ、こんな敏感な反応というのは、さすがヨーロッパのピアノならではのものかと、あらためて感心しました。
キャスターの向きによっても、音が変わったりする、とかも最近よく言いますが、やはりあれも、ピアノによってずいぶん変わったり、あるいはほとんど変わらなかったりしますね。
そう言ったピアノの敏感さが、そのピアノの表現力となって、音に現れてくるのかもしれません。
こういうピアノをさわると、いろんなことがわかったりして、おもしろいです(^
^)。
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「河芸町民の森ホール」 ベーゼンドルファーインペリアル 2001.8.3(金)
今日は久しぶりに河芸町民の森ホールです。
ここは7年ほど前に、あの、290cm、97鍵(!)のベーゼンドルファーインペリアルを入れました。
新品ではなかったですが、とても程度のいいものです。
ベーゼンドルファーピアノ(以下ベーゼン)は、僕がピアノを見直すきっかけを与えてくれた、僕にとってもとても大切なピアノです。
7年前、ここのホールのピアノを僕が見ていくために、1週間の研修に、磐田市にある、日本ベーゼンドルファーに行きました。
そして、その時の経験が、僕をヨーロッパのピアノに目を向けることになったのです。
その時に経験したこと、なかなか一口では言えませんが、でもまあ、言ってしまえば、ベーゼンの魅力に参ってしまったのですね。
何というか、ピアノの音が、もう楽譜の音符のようになって、飛び散るのですよね。
あるいは、そこで見たベーゼンのアップライトは、なんか音が、もう四次元あたりから聞こえてくる感じなのですよ。
今まで自分が知っていたピアノとはもう全く別世界の楽器でした。
同じようなピアノなのに、なぜこうも違うのでしょうね。
ただ残念なことに、ここのホールは使用率が低くて、せっかくのピアノがほんともったいないと思います。
ホール自体も、残念ながら、多目的ホールなので、響きの面から言うと、ちょっとピアノの魅力が充分出し切れてないかな、という感じがします。
まあでも、それは仕方のないことですよね。
それでもまあ、充分このピアノの魅力は聴くことが出来ますから、またいろんな時に、使ってもらえると大変僕もうれしいのですけどねぇ。
それにしても、深みと、品格のある、それで弾けば弾くほど魅力の出てくるピアノだと、あらためて思います。
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「プチグランドピアノ(?)」 ニーンドルフピアノ 2001.8.5(日)
ここんところ、ずっとヨーロッパ製ピアノが続いています。
別に普段はほとんど国産ピアノなんですけどねぇ・・・。
なんか、この連載(?)を始めたとたん、続いてしまってるみたいで、なにかおもしろいです。
実は、昨日も、静岡県磐田市にある、日本ベーゼンドルファー社に、伺ったところなんです。
そして今日は、またまた、ドイツ製ニーンドルフピアノ。
これは、奥行き145cmという、グランドピアノとしては、もう世界最小と言っていいのかもしれないくらい、(違ってたらごめんなさい)小さなグランドピアノです。
ところがその音ときたら、まあもちろん、145cmの音ではありますが、これがなんともかわいい、きれいで素敵な音が出るのです。
低音なんか、あんな短い弦でよくも、というほどの、なかなかの低音なんですよ。
それに、「どしらそふぁみ・・・・」と、低い方へ弾いていったら、ちゃんとそれが最後まで音階になって聞こえるのです(^
^)。
それって、そばにピアノがあったら、試してみるとわかりますが、なかなかそうは聞こえないものなんですよ(^
^;)。
だから、このサイズで、ちゃんと聞こえるというのは、僕らから見ると、ちょっと驚異なんです。
中高音ももちろん魅力的な音が出ます。
激しい曲をバンバン弾くタイプのピアノではないかもしれませんが、歌の伴奏とか、例えばバッハやモーツァルトとかいった古典派の曲なんか、魅力的に聴かせてくれるのじゃないかと思います。
もちろん、それは好みですけどね(^ ^;)。
歌の伴奏と言えば、このピアノの持ち主、ご夫婦で声楽をされてまして、今日も調律が終わったら、さっそく奥様がピアノを弾き出し、それに合わせて、ご主人がオペラのアリアや、ドイツリートなどを歌い出す、といった、とってもいい雰囲気のご家族なんです(^
^)。
7,8曲聴かせてもらい、ついでに僕も1曲歌わせてもらい(^ ^;)、とっても楽しい時間を過ごしました(^
^)。
そんな時間を持つことが出来るここの家庭と、またそんな時間を演出するお手伝いを、ちょっとでもこのピアノと、そして自分の仕事が、することが出来たとしたら、僕にとってこんな幸せなことはありません。
今日、このご夫婦の演奏を聴きながら、ほんとに僕は幸せをかみしめることが出来たのです。
うれしかったです(^ ^)。
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思い入れ ヤマハグランド C3B 2001.8.6(月)
もう20数年経った、ヤマハグランドピアノC3Bです。
昔はその家の一人娘さんが弾いていたピアノだそうで、僕がおじゃまするようになった頃は、もうそのお嬢さんは、遠くへ嫁いでいってました。
年に3度ほど家に帰ってきて、ピアノが弾かれるのはその時と、あとは、お母さんがたまに趣味の合唱の音取りで少し弾く程度です。
でも、毎年調律をしてるから、音もよくそろってるし、とてもいい状態で置かれています。
グランドピアノだと、結構場所もとるし、そんなに弾くわけでもないのに、なぜ、ずっと大事に置いてあるのか、という話になったとき、そのお母さんは、こんな話を聞かせてくれました。
その方の友達で、やはり遠くからこちらの地に嫁いできた人がいました。仮にその人をAさんとします。
Aさんは、やはり実家にグランドピアノがありました。たぶん子供の頃に買ってもらったピアノです。
でも、Aさんが、こちらに嫁いできたら、やはりそのピアノを弾く人がいなくなりました。
すると、Aさんのお父さんは、もう弾かないし、じゃまになるだけだからと思い、そのピアノを処分してしまったのです。
Aさんは、家に帰って、自分のグランドピアノが無いのを目にして、ショックを受けたそうなんです。
その話を、Aさんが、泣きながら自分に話してくれた、と言うのです。
だから、そのお母さんは、自分の家のピアノも、売ってしまったらきっと娘が寂しい思いをするだろうから、と、ずっと置いておくことにしたそうなんです。
物は、時間というパウダーをかけると、特別の価値を持ってくる、と誰かが言ってました。
家に長い間置いてあるピアノは、そのお家にとって、特別の価値のあるものなのですね。
だから、どんなピアノであっても、僕はそのことを忘れないように、仕事をするようにしています。
それに、そう思って仕事をする方が、ずっと仕事も楽しいですからね(^ ^)。
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畳と土壁 ヤマハアップライトU3H 2001.8.9(木)
今日は久しぶり(?)に、ヤマハのアップライト。23年ほど前のU3Hです。
もうほとんど使われなくなり、今は2歳になるおじょうちゃんが、遊びで弾く程度、とのこと。
それでも調律は、2年に1度くらいはお伺いしてるので、今回も、音はかなり狂ってましたが、それでもとてもいい状態になりました。
2年ほど前に洋間のリビングから、和室6畳に移動しました。
今回、ピアノを見て感じたことは、とにかくなかなかいい音が出てるのです。
僕は思いますけど、ヤマハのU3ではこのころのが一番良かったんじゃないかと・・・。
以前、ニューヨークスタインウェイのアップライトピアノ(!)を調律しました。
ヤマハU3とピアノの高さもほとんど同じ131cm位だったと思います。
でも、音がもうすごいのですよ!
なんか僕は、その時に、非常にでかい和太鼓を思い出しました(^ ^;)。
つまり、そのピアノは、叩いたら叩いただけの音が出るのですよね。
もちろんそんなピアノとU3を比べたらいけないのですけどね(^ ^;)。
だってピアノの値段一つとっても、かたや40数万円、もう一方は300万円以上(!)。
あ、僕が何を言いたいかというと、実は、このU3H、そのNYスタインウェイの方向を向いてる、と感じるんですよ。
というよりも、NYスタインウェイを調律したとき、「あ、ヤマハはこれを目指そうとしたのか。」と僕は感じたのです。
もしかしたら本当は違うかもしれませんけどね。
ただ、NYスタインウェイを見てから、ヤマハピアノの見方が、少し変わったのは事実です。
たとえは悪いかもしれませんが、本物の生わさびを食べたら、練りわさびの味が受け入れられるようになった、とでも言えばいいでしょうか。
もう一つ思ったことは、このピアノ、畳と土壁の部屋なんですけど、響きが非常にマッチしてるように思うのです。
このお家だけのことかもしれませんが、なんか、日本のピアノには日本の家屋だなぁ・・、なんて妙に感心してしまいました。
長く愛用してほしいピアノです。
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感動する音は・・ ヤマハアップライトU2G 2001.8.10(金)
今日は、ヤマハアップライトU2G。
まあ普通はこうやって、毎日ヤマハ、その他国産のアップライトピアノを調律することが多いのです。
もちろんグランドピアノもあります。
今日のU2Gは、ちょうど30年経ったピアノです。
今では、次の世代の子供さん達がこのピアノでレッスンをしています。
音は、もう決して良くはないです(- -)。
そりゃ、30年間よく使われ続けたわけですし、そのお家は、お寺でして、ピアノも何度か移動しました。
時には条件の悪い(湿度や温度)ところに置かれていたりもしました。
仕方ないですよねぇ。
でも、このあいだのC3Bでも書きましたが、やっぱりあるのですよ、その家ならではの、何かが。
その音を聞くと、以前置いてあったところの様子とか、いろんなことが出てくるような気がするのですよね。
もちろん僕は、そのピアノとずっと過ごしたわけではないですから、わかりませんが、それでも、そのお家の歴史みたいなものが、入ってるように思うのですよね。
そこの奥さまも、同じようにこのピアノを見ているのがよくわかります。
こんな時、いつも僕は思うんですね。
30年経って、未だにこうやってつきあえるものなら、もっといいものを買っていただいていたら、もっと満足して使っていただけたのに・・・って。
これは、本音です。
でも、そのころはそんなピアノ、日本には無かったですし、仕方なかったのですよね。
ちょっと悔しいですよね、でも。
もっといいピアノが作れなかったんだろうかって。
ここんところが、僕がずっと思い続けている部分なのです。
このHPを作ったのも、ここの部分を一番伝えたかったんだと思います。
でも、そんなピアノでもちゃんと感動する音は作れると思います。
僕はそこを目指してる訳なんですね、偉そうですけど(^ ^;)。
そんなこと考えるようになってから、僕は見えない力を信じるようになりました。
感動する音は、見えない力で作ることができるように思います。
う〜ん、ちょっとオカルトっぽいですか?
僕はちっともそうは思ってないので、こうやって書き続けてる訳なんですけど・・・。
もちろん、「そんな寝言みたいなこと。」とか思われても、それはそれでいいのだと思ってます(^
^)。
だって、人それぞれ価値観は違うわけですから。
ヴァイオリニストの堀米ゆず子さんは、自著、「モルト・カンタービレ」という本の中で、こんなことを書いてました。
・・・
ハンガリー生まれのヴァイオリニスト、シャンドール・ヴェーグは、”Your feeling
has right to exist!” (あなたの感情は、存在する権利がある!)と言う。
そう言われると、なんとなくうれしくなりませんか?
・・・
ちょっと話が飛躍しすぎましたが(^ ^;)、音楽をする原点のようにも思います。
音楽をするって、こういうことなんだと。
そんなわけで(^ ^)、今日はこのU2Gに、感動を与える仕事をしてきたつもりなんですが、さて、どう聞こえているか・・・、わかりませんよね(^
^;)。
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田中信昭 −音楽とは?− 2001.8.15(水)
純然たるピアノ調律日記にならないかもしれませんが、関係ないこともないので・・・(^
^;)。
というよりむしろ、こういったことが、僕のピアノ調律の原点になってるところもありまして、書いておきたいと思います。
トップページでも少し触れましたが、僕は、津市を拠点に活動をしている、合唱団「うたおに」で合唱をしております。
パートはバス。その中でもローバスといって、一番低いパートです。
その合唱団「うたおに」が8月12日に東京四谷区民センターでの、「『創る会』委嘱合唱作品初演演奏会」に客演として演奏させていただきました。
この「創る会」を指導しておられるのが、合唱指揮者の田中信昭氏です。
「うたおに」も幸運なことに、この田中氏の指導を受ける機会が度々あります。
田中氏の指導は、ただ単に合唱の技術を教えてくれたり、曲をきれいに仕上げてくれたりする指導ではなく、音楽、と言うよりも、芸術の本質を、我々に大変わかりやすく教えてくれるのです。
つまり、なんのために合唱をするのか、それは自己表現であり、またそれによってまわりと関わり合い、まわりの(つまり社会の)中にいる自分を再認識したり、自分の感情を表現することによって、またまわりにも影響を与えていく活動そのものだということを、合唱を通して教えてくれるのです。
それは、ピアノの調律も全く同じです。
僕は、自分の美意識から発せられたピアノのいい音をお客さまに届けることにより、お客さまの家にひとつの音楽文化を提案させていただいてるのだと思います。
いつも自分に問いただすこと、それは、「なぜ、この(今出ているこのピアノの)音が必要なのか?」、「なぜ、この音を自分はよしとするのか?」、それはすべて、「音楽をするのに必要な音」だからなのですね。
こうして文にしてしまうと当たり前のことですが(^ ^;)、僕にとっては、調律をするときに、常に目的意識、あるいは、目指す方向がしっかりしている、というのは、まるで嵐の中の羅針盤のようなものなんです。
音楽とは、あるいはいい音とは、言葉ではなかなか表現できないものなので、こうして文にしてみても、論理の中間の部分が僕のつたない文章では、まったく書くことが出来なく、悔しいし、読んでいただいてる皆さんにも申し訳なく思います。
でも、そのことは、替わりに僕の仕事で表すことなんだと思っております。
まあ、それはそれでまたなかなか大変なことなんですけど・・・(^ ^;)。
まだまだ拙い自分の調律技術ですが、羅針盤があるかぎり、少しずつでも良い方向へ向かっていけるのじゃないかと、それが、僕が合唱をやって、あるいは、あえて言えば、田中信昭というすばらしい指導者に巡り会えて、大変自分は幸福だったということを、今回の演奏旅行でも感じて帰ってきました(^
^)。
今日も、もう一度自分に、次の言葉を贈りたいと思います。
”Your feeling has right to exist!” (あなたの感情は、存在する権利がある!)
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置き方で変わるピアノの響き 2001.8.17(金)
今日はちょっと、ピアノをよく響かせる、ということについて、書いてみたいと思います。
昨日おじゃましたお家、ヤマハのアップライトU1Hなのですが、ピアノを置いてある場所が、ちょうどそこだけ引っ込んでるんですよね。
つまり、例えば、押入をピアノを置くスペースに改造したような・・・。
ちょうどたたみ1畳ほどのスペースです。
それがまた、ピアノの響きがちょうどよく増幅されて、良く聞こえるんです。
まあ、そのスペースが、まるでメガホンのようになってるんでしょうね。
一度皆さんも試してみられたら?、と思いますが、まあでもよく考えたらそのためだけにそんなスペース確保するのって、実際はなかなかそんなの出来ないですよね(^
^)。
だからまあもし機会があればってことで・・・。
あと、天井を高く、なんてのもありますけど、これもおいそれと出来るものじゃないですから、まあこれも天井を高くする機会があればってことで・・・(^
^;)、はは、そんなのちょっとないですよね。
以外と手近なところで、アップライトなんかよくピアノの上にいろいろ物をのせてるじゃないですか。
あれを取ってしまうのですよね。
ついでにピアノカバーも取ってしまいます。
どうしても置きたい物があれば、その部分だけなにかちょっと敷物でもおいて、でもなるべく置かないようにするのです。
それだけで、けっこう音はよく出てくるようになります。
なぜかというと、アップライトの場合、音はピアノの後ろ面から出てくるのですね。
だからそれがピアノ後方の壁にぶち当たり、壁とピアノの隙間から部屋に流れ出てくるわけです。
ところがピアノの上に物がたくさんあると、それがじゃまをして、ピアノの前に座ってる自分の耳に届きにくいのですよね、きっと。
だから、ついでに言いますと、ピアノと壁の隙間が3〜4cmくらいの場合は、もう少し、そうですねぇ、7〜8cmくらいですかねぇ、開けてやると、これもご想像通り、音がよく出てきます。
もしピアノを置いてある床が木のフロアなんかだったら、ピアノの下半身を持ち、ちょっと力を入れて引っ張ってやると、ピアノは以外と動きます。(ただ、あまり無理をすると、インシュレーター(お皿)からキャスター(駒)がはずれ落ちてしまうことがありますから、気をつけてください。特に床がすべらないカーペットなんかの場合はやめておいた方がいいです。一度はずれると、ピアノ運送業者でないと、はめるのは難しいです。)
もしピアノが壁に付きすぎていて、もうちょっと響きがほしい(これがなかなかビミョーですが)場合、試してみてはいかがですか?
ただし、ピアノによっては、ただ音が大きく、うるさくなっただけ、という場合もありますから、必ずしも豊かな響きが得られるというわけでもないです。
ま、ケースバイケースですね。
ついでに、「なんでカバーなの?」という疑問にお答えすると、ピアノの上前板(うわまえいた・ピアノ前面の広い板)と天屋根(てんやね・てっぺんのフタ^^;;)の隙間から出てくる音を外に出してやる、ということがひとつと、これは特にグランドピアノのカバーに言えることですが、ピアノのボディー全体の響きを押さえ込まない、という理由からです。
特に後者の場合、ヨーロッパのピアノなんか、その音の差はてきめんにあります。
響きがうんと豊かに、ナマの音が全面に出てきます。
それらのピアノは、それだけよくボディを響かせて鳴らしてるわけなんだろうと、僕は解釈しています。
いずれにしても、家にあるピアノ、せっかくですのでちょっとでもいい響きで使用できたら、また弾く機会もちょっとでも増えるかもしれませんし、もしよければ、一度いろいろ試してみてはいかがですか?
あと他には、グランドピアノのキャスターの向きとか、あるいはホールのステージで、どんな位置に置けばいいのかとか、他にもいろんな要素が出てきますが、それらはまた別の機会に。
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カンツォーネの響き フルシュタインピアノ 2001.8.19(日)
イタリア製のフルシュタインピアノというのがあります。
お値段はわりと手頃で、国産アップライトとそうたいしてかわらないピアノです。
昨日そのピアノの調律に行ってきました。
どんな音を皆さん想像されますか? (^ ^)。
そうですね。 やはりイタリア製らしく、とてもカラッとした明るい音なんです。
明るく歌ってる、って感じが伝わってきます。
まあ、このピアノのパンフレットにも、「カンツォーネの響き」とか、コピーが書いてありましたけどね。
楽器は、よく言われますが、ちゃんと値段だけの音が出るものだと基本的には思っています。
ただ、その音をどんな方向に向けてるか、というところで、そのピアノの性格が決まってくるのでしょう。
このピアノはちゃんと「歌う」方向に向いてるように思います。
以前、ファツィオリという、ちょっと綴りは忘れましたが(^ ^;)、(FAZIORI ?
) イタリアのピアノを見たことがあります。
うろ覚えの話で申し訳ないのですが、会社が出来たのはまだ最近(ここ20〜30年くらい??)で、ところが、とにかく世界最高峰を目指すとかで、なんか素晴らしい職人さんとかを集めて作ったピアノとかで、コンサートピアノのしかも世界最大のピアノ(サイズ3mを越えた?)を作ったとか・・・。
天屋根が大きすぎて、三つ折りにしたとか・・・。 スゴイ・・・(笑)
僕が見たのは、やはりコンサートピアノでした。
サイズとか詳しくは覚えがありませんが、(三つ折りではなかったなぁ・・)とにかくその音が、とっても素晴らしかったのです(^
^)(^ ^)。
スタインウェイや、ベーゼンドルファーなんかとも違った音で、まさに、カンツォーネ! の音なんです(^
^)。
カラッと明るくて、抜けるようなイタリアの青空、って、僕見たことないんですが(^
^;)、でもそんなイメージが、瞬時にわいてくるような、そんな素敵な音だったのですよ。
なんか、いろんな悩みが、その音を聞いてるだけで吹っ飛んでしまいそうだと(笑)、僕はその時思ったものです(^
^)。
いやぁ〜、ピアノにはいろんな個性があるもんだなぁ〜、と、ほんと感心しました。
フルシュタインも、その方向だと、僕は思ったのです(^ ^)。
8/9の、スタインウェイとヤマハの話じゃないですが、やはり方向がしっかりしてると、ピアノが生きてきます。
昨日はそのピアノ、写真取ってきましたので(^ ^)、ちょっと皆さんにもお見せしますね。
もちろん掲載許可も快く出してくれました(^ ^)。
Oさん、ありがとうございました。m(_ _)m
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材料の音 ヤマハアップライトUX 2001.8.28(火)
普段こうやって一般家庭の調律を主にやっていると、どうしても扱うピアノが限られてきまして、まあほとんどがヤマハのアップライトピアノになります。
別にヤマハに限らずですけど、ピアノはやはり材料の音がちゃんと出てくると僕は思います。
現実的にも、例えばヤマハであれば、どんな器種であってもだいたい似通った音がでてますよね。
もちろんピアノは、材料だけの問題ではありません。
ピアノの設計や、制作技術、最後の仕上げ調整、全部がとても大事です。
でもその楽器の音の根本を作っているのが、材料かもしれません。もちろんそれは加工技術も含めて。
例えば、同じメーカーの同じ器種のピアノでも、黒塗りピアノと木目調ピアノでは、音の傾向がちがうようにいつも感じます。
黒塗りは、どちらかというと、ちょっと音が堅い、というのか、クリスタルな音が出てるように思います。
かたや木目調は、これはやはりちょっと柔らかめのおとなしい音、とでも言うのでしょうか、そんな風に僕はよく感じます。
やっぱりこれは、「塗料」という材質の差がおおいに影響してるんじゃないかと思ってます。
つまり、例えばヤマハのアップライト一つ一つとりあげても、だいたい大まかには「ヤマハの音」ということで、くくってしまっていいのじゃないかと思える訳なんですが、その中で、僕が割と気に入ってる器種というのが、昭和50年頃からしばらく出ていたUXという器種です。
今日伺ったお宅がこのUXなんですが、残念ながら今日はカメラ持ってなくて(^
^;)、お見せすることは出来ません。
鍵盤蓋のすぐ上あたりが、ちょうど45度位の角度でまっすぐ斜めになっているピアノです。
前にも、「割といいよね。」といったふうに書いたU3Hの音をもう少し明るくした感じの音です。
ただ残念なことに、このピアノも音としては最盛期を過ぎてるように感じました。
数年前までは、もうちょっといい音が出てたように思うんですけどねぇ・・・。
ひょっとしたら、僕の聴く耳が変わったのかもしれませんが・・・。
まあそれでも、今の新品のピアノにはない、なにかおもしろさを感じさせてくれるピアノです。
コストパフォーマンスという意味では、とてもいいのだと思います。
これらのピアノを持ってる方がいらっしゃいましたら、ぜひどうぞこれからもかわいがってあげてくださいね(^
^)。
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